住職挨拶

ごあいさつごあいさつ

福応寺の目指す“お寺像”

福応寺がある浜松市浜北区は静岡県内でも人口が増えているエリアで、お寺の周辺は古くからの町と2つの新旧ニュータウンに囲まれており、さまざまな年代・価値観の方が住んでいます。福応寺の檀家数は多くもなく少なくもなくといったところですが、お寺と檀信徒のこころの距離感は大変近いと感じています。

近年、浜松市全域で民間企業の霊園開発や神道葬儀が急速に台頭し、寺離れが加速しており、住職に就任してからも毎年何かしらの変化を感じております。その間、常に自問自答しているのは「自分がお寺を選ぶ立場だったら?」「自分が檀家だったらどんな和尚に世話になりたいか?」ということです。在家出身・会社員経験者ということもあって、お寺目線での「当たり前」に疑問を感じていました。

福応寺が目指すお寺像は、“人が集まる開かれたお寺”。お寺が必要とされ、自然と人が集っていた時代には、 檀家、信者、地域に対して『三つの大切な役割』を担っていたのでは、と考えて実践しています。

1つ目は「Compassion」。
“救いたい”という慈悲心です。皆様の立場に寄り添う供養、皆様に共に参加していただく供養を実践しています。
また、全国のお寺の「ある」と社会の「ない」をつなげることで、貧困問題の解消に寄与することを目的にした活動である『おてらおやつクラブ』『フードバンク』に参加しています。
2つ目は「Culture」。
お寺はもともと寺子屋でした。様々なお寺ならではの学びの場を開講しております。
3つ目は「Community」。
お寺は村の集会所であり、日本古来の文化の発祥の地でした。集い場として地域の方が楽しめる様々なイベントを開催しております。

この三つを実践していった結果、徐々に檀家・信者・地域の方が気軽に寄っていただけるお寺になりました。寺離れといわれる時代のなか檀家をやめる方はおらず、また皆様方のご紹介などで毎年檀信徒が増え続けており、責任を感じるとともに身が引き締まる思いです。

お寺の100年後を考える

また、「“100年後に残るお寺”をテーマにお寺の運営基盤を強化すること」も見過ごせない課題です。おそらく今後10年もすると、ご寄付をいただけない時代がやってきます。
仮に10年後にそのようになるのであれば、今から自助努力で全てを整えられる運営基盤をつくるべきです。一般企業や商店は、建物の修繕費や備品の減価償却を考えて逆算し、貯蓄しています。当寺は、世間の皆様が当たり前にしていることを当たり前にできるお寺へと変革中です。

交通手段の発達や生活環境の変化、家制度のめまぐるしい変化により、かつての檀家制度と墓地のみではお寺に助けてほしいと思っている方すべてを救えません。

昭和の初期は養子縁組をしてまで家を残し、戦後では婿養子を迎えて家を残し、現在の世帯主世代では一緒の敷地内に住みつつも名字が違う(実質の継承者)場合もあり、若者世代においては結婚すると親世代と一緒に住まずに別の場所に居を構えます。
墓地を含む就活事情は、世相がそのまま数十年後に反映されます。
かつての檀家制度と墓地は、家制度(家長制度)が盤石であることが前提です。

様々な価値観が多様化している現在、お寺だからこそすべての人を救う努力をしないといけないと思い、「継承を前提とした伝統的な仏式一般墓地」・「継承者はいないが伝統的な手厚い供養を希望の方の夫婦墓・二世代墓」・「個別区画永代供養の樹木葬」・「負担を減らしたい方のための合祀永代供養塔」と、さまざまな立場や価値観の方々を受け入れられるように、“選べるご供養のお寺”として山内整備を進めています。

色々な要望に応えると同時に、新しい仲間が集うことで運営基盤をつくり、「檀信徒から寄付をいただかなくても山内整備を進められるお寺をつくること」も次世代の福応寺にかかわる皆様のためになると、確信しております。

最後に

家は引っ越しをします。家族も(死別を含め)いずれ必ず離れます(愛別離苦)。
しかし、お寺は古くからいつ何時もそこにあります。
皆様に何かがあった時に戻ることが出来る場所がお寺です。
福応寺は100年後、200年後にも“ここ”にあるお寺でありたいと想っています。

福応寺住職 小川昌久 拝

プロフィールプロフィール

福応寺住職 小川昌久

小川 昌久ogawa shokyu

1975年生まれ。
在家として生まれ育ち、地元の浜松西高校卒業後、東京の私立大学経済学部に進学、卒業後東京都内で就職。
出家し南禅寺派廣園寺僧堂での修行の後、大本山方広寺派部員を経て福応寺住職に就任。
「未来の住職塾」第6期静岡クラス卒業。「僧侶のためのグリーフケア連続講座」終了。
学び直しのため平成31年度より仏教系大学通信教育部仏教学科に3年次編入にて入学。現在に至る。

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